山に登ってみたいけれど、靴は何を買えばいいのか、どの山なら安全なのか、そもそも何から手をつければいいのかが分からず、登山の始め方で止まっていませんか?
この記事では、登山を今日から始めるための5つのステップを、山の決め方から当日の歩き方まで順番どおりに解説します。
最初にそろえる装備、計画の立て方、かかるお金、一人で始めるときの考え方までひととおり扱います。
読み終えるころには、最初に登る山と買うべき道具がはっきりし、次の週末に安心して登山口に立てる状態になります。
登山の始め方は「山を決める → 装備 → 計画 → 前日確認 → 当日」の5ステップ

登山を始めるのに、高い山も高価な道具も必要ありません。
往復3時間以内の低山を1つ決めて、靴・ザック・レインウェアの3つをそろえ、コースタイムを調べて計画を立てれば、初回の登山はそれで成立します。
やることを順番に並べると、次の5つになります。
上から順に進めれば迷うところはほとんどありません。

| ステップ | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 山を決める | 往復3時間以内・標高差500m以内・登山道が整備された低山 | 30分 |
| 2. 装備と服装をそろえる | 登山靴・ザック・レインウェアの3つを先に。服は手持ちの化繊で代用 | 1〜2週間 |
| 3. 計画を立てる | コースタイム×1.2倍で下山時刻を決め、地図アプリを入れて登山届を出す | 1時間 |
| 4. 前日に確認する | 天気・体調・持ち物・登山口までの交通 | 15分 |
| 5. 当日は歩き方を守る | ゆっくり歩く・こまめに休む・水を飲む・14時までに下山を始める | 当日 |
登山は、山頂を目指して山道を歩くだけのシンプルな遊びです。
特別な体力や技術がなくても、山と装備と計画を「初心者向けの範囲」に収めれば、危ない目に遭う確率はぐっと下がります。
逆に言うと、失敗する人はこの5つのどこかを飛ばしています。
有名だからと標高2,000m級の山を選ぶ、スニーカーで登る、コースタイムを調べずに昼過ぎに登り始める、といった行動が事故につながります。
ステップ1:最初に登る山を決める

往復3時間以内・標高差500m以内の低山から
最初の山は「標高の高さ」ではなく「歩く時間と登り下りの量」で選びます。
山の高さそのものより、登山口から山頂までの標高差と、往復にかかるコースタイムのほうが体への負担を左右するからです。
目安は、コースタイムが往復3時間以内、登山口から山頂までの標高差が500m以内です。
この範囲なら、運動習慣がない人でも休みながら歩き切れます。
コースタイムは、YAMAPや山と高原地図といった登山地図アプリを開けば、山ごとに表示されます。
ガイドブックの数字は休憩を含まないので、実際には1.2〜1.5倍かかると見ておくと安全です。

登山道が整備されていて人が多い山を選ぶ
同じ低山でも、道標が立っていて登山道がはっきりしている山と、踏み跡が薄い山では難しさがまったく違います。
初回は、ハイキングコースとして案内されている山、ロープウェイやケーブルカーがある山など、人が多く道が整った山を選んでください。
人が多い山は、道に迷いにくく、何かあったときに助けを呼びやすいという安心感があります。
静かな山に行きたくなるのは、何回か経験を積んでからで十分です。
登山口までのアクセスも先に確認する
山を決めるときに見落としがちなのが、登山口までの行き方です。
駅やバス停から登山口まで歩ける山なら、車がなくても行けますし、帰りに時間を気にする必要も減ります。
車で行く場合は、登山口の駐車場の台数と、朝何時に満車になるかを調べておきます。
人気の低山は週末の朝8時には埋まることが珍しくありません。
ステップ2:装備と服装をそろえる

最初に買うのは「登山靴・ザック・レインウェア」の3つ
登山道具は種類が多く、全部そろえようとすると10万円を超えます。
ですが、最初に自分で買う必要があるのは、登山靴・ザック・レインウェアの3つだけです。
この3つは「登山の3種の神器」と呼ばれ、安全に直結するので手持ちの物で代用しません。

| 道具 | 選び方の目安 | 価格帯 |
|---|---|---|
| 登山靴 | くるぶしを覆うミドルカット。防水で、つま先に1cmの余裕がある物 | 1.5〜3万円 |
| ザック | 日帰りなら20〜30L。腰ベルトが付いている物 | 1〜2万円 |
| レインウェア | 上下セパレート。傘や100円のカッパでは代わりにならない | 1.5〜3万円 |
登山靴は、スニーカーと違って足首を支え、濡れた岩や砂利で滑りにくい底になっています。
下りで足首をひねるケガを防ぐために、初回からきちんとした靴を履いてください。
レインウェアは、雨のためだけでなく、風を防いで体温を守る役目があります。
山の上は平地より気温が低く、風が吹くとさらに体感温度が下がるので、晴れの予報でもザックに入れて持っていきます。
服装は「綿を避けて重ね着」が基本
服は、最初は手持ちの物で構いません。
ただし綿(コットン)のTシャツやジーンズは避けます。
綿は汗を吸って乾かず、休憩中に体を冷やすからです。
スポーツ用の化繊Tシャツに、薄手のフリースかウインドブレーカーを重ね、下はストレッチの効いた化繊のパンツにします。
これを「レイヤリング(重ね着)」と呼び、暑ければ脱ぎ、寒ければ着るという調整で体温を保ちます。
季節ごとの具体的な服装は、登山の服装をまとめた記事で詳しく扱います。
日帰りの持ち物リスト
3種の神器と服装のほかに、日帰りで必ず持っていく物を挙げます。
ヘッドライトは「日帰りだから要らない」と思われがちですが、下山が遅れて暗くなったときに命綱になるので、必ず入れてください。
- 水:1人あたり1〜1.5L(夏は2L)
- 行動食:チョコ・ナッツ・ようかんなど、歩きながら食べられる物
- 昼食:おにぎりやパン
- ヘッドライト(予備電池も)
- 地図アプリを入れたスマホとモバイルバッテリー
- 帽子・手袋・タオル
- 救急セット(絆創膏・テーピング・常備薬)
- ゴミ袋・トイレットペーパー・健康保険証のコピー
ステップ3:計画を立てる

コースタイム×1.2倍で下山時刻を決める
山を決めたら、出発時刻から逆算して計画を立てます。
コースタイムに1.2倍(体力に自信がなければ1.5倍)をかけ、休憩と昼食の時間を1時間足したものが、実際にかかる時間の目安です。
下山は、遅くとも15時には終えるように出発時刻を決めてください。
秋冬は17時前に暗くなりますし、山では日没が平地より早く感じます。
往復3時間の山なら、朝9時に登り始めれば昼過ぎには下りてこられます。
登山地図アプリを入れて、地図をダウンロードしておく
紙の地図の読み方を覚える前に、まずスマホに登山地図アプリを入れます。
YAMAPやヤマレコは、現在地がGPSで地図上に表示されるので、分岐で道を間違えてもすぐ気づけます。
山の中は電波が入らない場所が多いので、出発前に自宅で、その山の地図をダウンロードしておくことが必須です。
当日、登山口で慌ててもダウンロードできません。
登山届を出す
登山届(登山計画書)は、誰がどのルートをいつ歩くかを警察や家族に知らせる書類です。
低山の日帰りでも、万一遭難したときに捜索の手がかりになるので、出す習慣を最初からつけておきます。
登山届は、登山口のポストに紙で出す方法のほか、「コンパス」というオンラインサービスやYAMAPのアプリからも提出できます。
家族やパートナーに行き先と帰宅予定時刻を伝えておくだけでも、何もしないよりずっと安全です。
ステップ4:前日に天気・体調・持ち物を確認する

天気は「山の天気予報」で見る
前日の夜に、天気予報を必ず確認します。
このとき見るのは、街の天気ではなく山の天気です。
てんきとくらす(てんくら)などの山の天気サイトは、山ごとに登山の適否をA〜Cで表示してくれるので、初心者でも判断しやすくなっています。
雨や強風の予報が出ていたら、初心者のうちは迷わず延期してください。
山は逃げません。
中止の判断ができることも、登山の技術のひとつです。
体調が悪いときは行かない
寝不足、二日酔い、風邪気味のときは、平地では平気でも山では急にきつくなります。
登山は数時間動き続ける運動なので、前日はしっかり寝て、朝食を食べてから出発します。
持ち物と交通を前日にそろえる
持ち物は前日の夜にザックに詰めて、玄関に置いておきます。
朝に慌てると、ヘッドライトや地図のダウンロードのような「なくても出発できてしまう物」を忘れがちだからです。
電車やバスで行く場合は、登山口行きのバスの本数を確認します。
山のバスは1日数本しかないことが多く、帰りの最終便を逃すとタクシーを呼ぶことになります。
ステップ5:当日はゆっくり歩き、こまめに休む

「会話ができる速さ」で歩く
初心者がいちばん失敗しやすいのが、最初に飛ばしすぎることです。
登り始めは元気なので速く歩けますが、30分後に息が上がって足が止まります。
歩く速さの目安は、隣の人と普通に会話ができる程度です。
息が切れるなら速すぎます。
歩幅を小さくし、靴の裏全体で地面を踏むように登ると、疲れにくくなります。
休憩は1時間に1回、水は喉が渇く前に飲む
休憩は、疲れてから取るのではなく、1時間ごとに5〜10分と決めて取ります。
休憩のたびにひと口ずつ水を飲み、行動食を少し食べておくと、後半のばて方がまったく違います。
山頂に着いたらゆっくり昼食を取り、下山前に必ず地図で帰りのルートを確認します。
下りは膝に負担がかかるので、登りよりさらに歩幅を小さくして、慎重に下りてください。
登山のマナーは「登り優先」と「あいさつ」から
登山道ですれ違うときは、登っている人を優先して道を譲るのが基本です。
また、すれ違う人と「こんにちは」とあいさつを交わす習慣があります。
あいさつは、お互いの存在を確認しておく安全のための行動でもあります。
ゴミは必ず持ち帰り、登山道から外れて植物を踏まないようにします。
細かいルールは登山のマナーをまとめた記事に譲りますが、この2つを守っていれば大きく外すことはありません。
登山を始めるのにかかるお金と、一人で始めるときの考え方

初期費用は5〜8万円が目安。レンタルなら数千円
登山靴・ザック・レインウェアを新品でそろえると、合計で5〜8万円ほどかかります。
「続けるか分からないのに高い」と感じるなら、最初の1〜2回は登山用品のレンタルを使う手があります。
3種の神器をセットで数千円から借りられるサービスがあります。
ワークマンやユニクロの化繊ウェアを組み合わせれば、服にかけるお金はかなり抑えられます。
ただし靴だけは、レンタルするか専門店で足に合わせて買うかのどちらかにしてください。
一人でも始められる。不安ならツアーやサークルから
登山は一人で始めても問題ありません。
人が多い低山を選び、登山届を出し、家族に行き先を伝えておけば、一人でもリスクは十分に管理できます。
とはいえ、道具の選び方や歩き方を誰かに教わりたい人は、登山用品店が開いている初心者向けの登山教室や、日帰りの登山ツアーに参加すると、1回で基本が身につきます。
登山サークルは、仲間と一緒に登りたい人に向いています。
よくある質問

登山は何歳からでも始められますか?
年齢の制限はありません。
50代・60代で始める人も多く、低山の日帰りであれば体力に合わせてコースを選べます。
膝や心臓に不安がある人は、始める前に医師に相談しておくと安心です。
体力がなくても登れますか?
往復3時間以内の低山なら、日常的な運動習慣がなくても歩き切れます。
心配なら、平日に30分のウォーキングや階段の上り下りを続けておくと、当日の余裕が生まれます。
スニーカーで登ってもいいですか?
舗装された遊歩道レベルの山なら歩けますが、土や岩の登山道ではおすすめしません。
スニーカーは底が滑りやすく、足首を支えないので、下りでねんざしやすくなります。
初回からレンタルでもいいので登山靴を用意してください。
初心者は何月に始めるのがいいですか?
低山なら4〜6月と9〜11月が歩きやすい季節です。
真夏の低山は暑さで熱中症のリスクが高く、冬は雪や凍結の対策が必要になるため、最初の1回は春か秋を選んでください。
登山届は低山でも必要ですか?
義務ではない山がほとんどですが、出しておくことをおすすめします。
アプリから1分で出せますし、万一のときに捜索が早くなります。
家族に行き先を伝えるだけでも効果があります。
山の中でトイレはどうすればいいですか?
登山口と山頂付近にあるトイレの場所を事前に調べ、登山口で必ず済ませておきます。
トイレがない山では携帯トイレを持ち、トイレットペーパーは持ち帰るのがマナーです。
途中でつらくなったら引き返してもいいですか?
もちろんです。
山頂に着くことより、無事に帰ることのほうが大切です。
「予定の時刻までに山頂に着かなければ引き返す」と最初に決めておくと、判断で迷いません。
まとめ:低山を1つ決めて、3つの道具と計画をそろえれば始められる

登山の始め方を、やりたいことから逆引きできる形でまとめます。
| やりたいこと | やること |
|---|---|
| 最初の山を決めたい | 往復3時間以内・標高差500m以内・道が整備された人の多い低山 |
| 道具を最小限でそろえたい | 登山靴・ザック・レインウェアの3つ。服は綿以外の手持ちで |
| 安全に計画したい | コースタイム×1.2倍、15時までに下山、地図アプリと登山届 |
| 当日ばてたくない | 会話できる速さで歩き、1時間に1回休み、喉が渇く前に水を飲む |
| お金をかけたくない | 初回はレンタル、服はワークマン・ユニクロの化繊で |
登山は、最初の一歩さえ踏み出せば、山を変え、季節を変え、泊まりに広げていくらでも楽しみが広がる趣味です。
まずは近くの低山を1つ決めるところから始めてみてください。
